HOME > 月次コラム > 効率的・効果的なERP導入方法 第3回:RFPの作成

コラム

効率的・効果的なERP導入方法  第3回:RFPの作成  2011.1.14 末松 康祐

前回はERP導入の最初のステップある基本構想の立案について述べました。
その基本構想が固まった後(または並行して)進めるのがRFP(Request For Proposal)の作成です。。

RFPとは…
 ・ ユーザ企業がERP導入に関してベンダーに提案を依頼するための資料
 ・ ERP導入の前提事項や、提案内容に対する要求事項を記載


RFP作成の目的とは…
 ・ ベンダーに前提事項/要求事項を正確に理解してもらうことにより、提案精度を向上させること
 ・ 複数のベンダーに対して同時かつ同条件での提案依頼を行うこと


以前はRFPを出さずにベンダーに提案を依頼し、数多くの提案・デモを聞いてしまうユーザ企業が多く見られました。
その結果、比較・検討が困難になり、感覚的な意思決定となってしまっていました。
以前にお聞きした話では業務改革を達成するためのERPパッケージを選定していたが、結局、画面の見た目が良い ERPパッケージに決まってしまったとか。

昨今ではRFPの提示が必須と考えられており、多くの企業がRFPを作成・提示した上でERPパッケージを選定しておられます。

RFPを作成するメリット
 ・ERP導入の前提事項や提案に対する要求事項を整理する過程でユーザ企業内での意見調整が行いやすい。
 ・複数のベンダーを同一条件で公平に競争させることができる。
 ・同一の要求事項に対する提案を受けることができるため、比較・評価が容易となる。
 ・ベンダーが網羅的に要求事項を理解できるため、提案精度が向上する。
 ・ベンダーとの認識齟齬が極小化されるため、導入段階で計画通りに進みやすい。


ベンダーはRFPの内容から提案書/見積書を作成します。
その精度が低ければ提案書/見積書の精度が低くなり、そのツケをユーザ企業が負担することになります。
ERP導入失敗事例の多くでRFPの精度が低かったことが一因となっています。

では、RFPにはどういった内容を記載すべきでしょうか。
弊社のこれまでの経験から、下記のポイントを抑えることでERPベンダーからの提案の精度が大きく向上します。

【RFPへ記載すべき内容】
項目主な記載事項留意すべきポイント
提案依頼の概要 ・自社の概要
・プロジェクトの背景/目的
・現状の課題/改革テーマ
・提案依頼内容
ERP導入で『何を実現したいか』が明確に
ベンダーに伝わるような記載を心がける。
また、ベンダーに期待することを記載する。
技術的な要求事項 ・想定するシステム全体像
 (提案依頼対象システム)
・要求機能
・ハードウェア要求事項
・ソフトウェア要求事項
・性能要件
各業務領域における要求機能を網羅的に記載する。
(弊社では『業務機能展開表』というチャート形式で作成)
ハードウェア要求事項の前提として、現状システム
における伝票件数/マスタ件数を記載する。
プロジェクト推進
に関する要求事項
・想定する導入スケジュール
 (新システム稼働時期)
・作業場所
・プロジェクト運営体制
・成果物文書
・役割分担
提案の前提とすべき事項とベンダーの推奨を提案
させる事項を明確にした記載を行う。
特に教育作業(マニュアル作成や講師など)や
移行作業は想定している役割分担を明確に記載する。
提案者に関する
開示要求事項
・会社概要
・過去の導入実績
・開発方法論
・関連技術者の保有状況
・参画予定者の経歴
導入実績に関しては、提案パッケージの実績や
同一業界における実績の開示を要求する。
参画予定者に関しては、特にプロジェクトマネージャ
の経歴を必須として要求する。
見積/契約に関する
要求事項
・見積書の記載範囲/粒度
・契約形態
見積に関しては、比較を容易にするために、
フォーマットを指定する。
提案事務手続き
に関する情報提示
・提案の期限/提出先/提出方法
・契約までの想定スケジュール
・提案書の作成要領
・選定方法
提案までの流れ(Q&A、提出媒体、書類審査有無)
と提案後の流れ(選定、契約内容調整、契約)の
時期や実施要領を記載する。
現状のシステム/業務
に関する情報提示
・商流/物流の概要
・現状業務フロー
・現状システム全体図
・ネットワーク構成図
・社内標準
現状の業務/システムをベンダーに理解してもらうため、
NDA(秘密保持契約)の締結を前提とし、可能な限り
詳細な情報を提示する。

これらのポイントをクリアしたRFPは、少なくとも50頁以上の書類になります。
1から作成すると大変な作業量ですが、弊社ではこのテンプレートを作成し、約1週間程度での作成を可能にしています。

最後に、RFP作成はユーザ企業にとって非常に労力がかかり、つい疎かにしてしまいがちなタスクですが、 これを疎かにしたばかりに後の導入や稼働後に大きな代償を払うことになります。 関連部門およびプロジェクト全体でRFP作成の目的を共有/浸透し、全社的な協力体制のもとで推進することが肝要です。

次回は各ERPベンダーからの提案を評価し、選定するポイントをご紹介します。



【次回以降の掲載予定】
  第4回:パッケージ/導入ベンダー選定
  第5回:要件定義/プロトタイピング
  第6回:移行
  第7回:チェンジマネジメント
  第8回:プロジェクトマネジメント

▲ back to top